会長メッセージ

人類社会の安定と発展に責任をおい、世界から飢餓と貧困を撲滅する

トップメッセージ

ゼンショーホールディングス創業の経緯

 ゼンショーホールディングス(以下、ゼンショー)は、1982年に資本金500万円で創業しました。当時、世界では第二次世界大戦を経てもなお争いが絶えず、人口の3分の1が満足な食事を確保できない状況にありました。そうした時代を背景に、世界から飢餓と貧困をなくすことが人類全体の課題と考え、「株式会社の力でこの問題を解決しよう」とゼンショーを設立したのが我々の出発点です。当初は吹けば飛ぶような零細企業でした。しかし、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」というビジョンに共感する仲間が陸続と集まり、事業規模は拡大し、理念を現実のものとする体制が整いつつあります。



ゼンショーが現在の規模にまで成長できた理由

 ゼンショーは売上高1兆1,366億円(2025年3月期)、世界15,419店という規模に成長し、国内外食企業としては売上No.1、世界の外食企業としてもトップ10に入るまでになりました。創業以来掲げてきた「世界から飢餓と貧困を撲滅する」というビジョンに共感し、「人類史にエポックをつくろう」と本気で取り組むメンバーが多数集まってくれたからです。
 しかし、本当に世界を変えるためには規模のさらなる拡大が必要です。世界中のより多くの方々の共感を得て、ビジョンの達成に向け一緒に取り組むメンバーをもっと増やしていかなければならないと考えています。



理念の進化

 2023年、ゼンショーは理念を進化させました。「食を通じて、人類社会の安定と発展に責任をおい、世界から飢餓と貧困を撲滅する」。 ゼンショーが一定の社会的影響力を持ちつつあると実感する一方で、世界が不安定さを増していることにいっそう強い危機感を抱いています。世界各地で起こる国家・部族・民族間の対立が、人類社会に大きなダメージを与えています。この状況を我々はただ外から眺めているのではなく、自らの責任として諸問題に取り組み、社会の「安定」と「発展」に寄与しなければならないと考えました。
 ゼンショーでは、原材料の調達から製造・加工、物流、販売に至るまでを自社で企画・設計、運営する「MMD(マス・マーチャンダイジング・システム)」を構築しています。これは世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供する仕組みです。このMMDを世界に展開することで、不測の事態が起きた時でも食の安定供給が可能な、人類を支える「食のインフラ」をつくっていきたいと考えています。食を通じて世界の「安定」と「発展」を実現するという意味でいえば、私たちの活動はいまだ発展途上にすぎないのです。



理念の実現に向けて

 歴史を紐解けば、世界では植民地支配やプランテーション化によって、宗主国の都合で生産品目を限定され、その土地土地で食べるものを生産する仕組みや伝統文化の継承が断たれるという事態が多くの地域で起きてきました。ゼンショーはこの負の流れを変えようとしています。世界中の人々が十分な食を手にでき、子どもたちが教育の機会を確保できる。そして、自らの文化や伝統、技術に誇りを持って生活できる。そのような社会を実現しなくてはならないと考えています。
  世界が不安定であることには、西洋哲学の根底にある二項対立的な思想(弁証法的思考)が影響していると考えています。長い歴史の中で生まれたさまざまな対立を、善か悪かという発想でとらえていては、いつまで経っても紛争はなくならないでしょう。このような問題の克服には、新たな思考への転換が必要とされていると考えています。
  「和を以て貴しとなす」。この言葉に象徴される二項対立的でない日本文化の発想こそが人類の安定の基盤になると私たちは考えています。異なる文化を持つ者同士が、お互いのバックグラウンドを理解し、尊重し、共感しあう。そのような思考を持つことこそが、争いや対立の絶えない現代の世界を変える手がかりになるのではないでしょうか。
  ゼンショーは従業員が本物の日本文化に触れ、その根底にある考え方への理解を深める場として、2023年、日本文化の粋が集まる京都に日本文化研修センターを開設しました。当地で開催している「日本文化に触れる研修」では、研修者が華道、書道などの体験を通じ、諸外国の文化を理解する土台として、まずは自国の文化を深く理解することに努めています。こうした活動が世界中の人々から共感を得られる人財の育成につながると確信しています。
  人類社会の安定と発展に責任をおう日本発の企業として、世界中に共感の輪を広げ、「食のインフラ」の構築に取り組んでまいります。

小川 賢太郎

株式会社ゼンショーホールディングス
代表取締役会長
小川 賢太郎