パキスタン洪水被害支援
支援が届きにくい地域の被災者に日常食を
パキスタンに未曽有の被害をもたらした洪水
2022年6月から8月にかけて、パキスタンではモンスーン等の影響で豪雨が続き、各地で大規模な洪水が発生しました。8月には国土の3分の1が冠水する事態となり、同25日にはパキスタン政府が「国家緊急事態」を宣言。洪水による死者は1,700人以上、被災者は国民の約7人に1人にあたる3,300万人以上に及びました。
現地では多くの家屋が流失・冠水・倒壊したため、これらに住んでいた人々は避難生活を余儀なくされました。また、人々の収入源である農地や家畜までもが甚大な被害を受けるなど、被災者は生活の再建が困難な状況に陥っており、復興には長い時間がかかると予想されています。
ゼンショーはこの災害に際し、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念のもと、被災者の生活の安定に寄与したいとの想いから支援を決定。困難な状況にある人々の食生活を支えるため、被害が深刻な地域の一つであり約85万人が被災したシンド州ダドゥ郡にて食糧配布を行うことにしました。
緊急支援の決定
ゼンショーとゼンショーグループ労働組合連合会は、2022年9月に労使共催での緊急支援を決定後、グループの店舗で募金活動を実施。並行して、お客様および従業員から寄せられた募金を活用してどのような支援を行うべきか、様々な関係機関と協議を重ねました。
そして、募金総額9,459,141円を、パキスタン大使館を通じ被災者の義援金に、また、現地で緊急支援を行う特定非営利活動法人ジェン(以下ジェン)を通じ、被害の深刻なシンド州ダドゥ郡における食糧配布に活用することを決定しました。
ダドゥ郡における食糧配布
食糧配布を実施したダドゥ郡では、約85万人(ダドゥ郡人口の半分以上)がこの洪水による被害を受けました。被害が深刻だったほか、内陸部に位置することから国際機関などの支援が届きにくい状況でした。
ゼンショーの支援決定後、既にダドゥ郡で活動していたジェンの現地スタッフは、この事業の対象者として適切な人々の被害状況を改めて調査。半壊または全壊している住居、未だ食糧支援を受けていない世帯、身体の不自由な方や妊婦、乳児がいる世帯などの基準に従い、食糧を配布する村が選定されました。また、配布を行う村では住民で構成された被益者特定委員会とジェンのスタッフが、地域内の各世帯を直接訪問しながら配布先の特定と状況確認を行いました。
そして、2023年2月から3月にかけて、主食の米や小麦粉のほか、パキスタンの人々が日常的に口にする豆や紅茶などを詰め合わせた、ジェン現地スタッフこだわりのパッケージが、ダドゥ郡の被災者507世帯(約3,550人)に配布されました。
ジェンのスタッフが村の住民にヒアリングを行う様子
食糧配布の様子
食糧を受け取った、4人目の子どもの出産
を控えていた女性
食糧配布概要
配布日時: | 2023年2月14日(火)、15日(水)、3月9日(木)計3日間 |
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場 所: | パキスタン シンド州 ダドゥ郡 |
提供者数: | 507世帯(約3,550人) |
提供内容: | 1世帯あたり米10kg、小麦粉20kg、食用油5L、豆6kg、砂糖5kg、ヨウ素添加塩1kg、茶葉1kg、粉ミルク(主に紅茶用)1kg |
ゼンショー社員による被災地訪問
2023年5月、洪水の被害状況や支援の効果の把握、および今後の支援を視野に、ゼンショーの社員3名がダドゥ郡を訪問しました。実際に食糧配布を行った5つの村を訪れ、被災者から洪水発生時の状況や食糧配布の効果などを直接伺いました。被益者からは、被災時に支援物資が中々手に入らなかった状況とともに、「(ゼンショーの支援による)食糧が手に入って助かった」という感謝の声が多く寄せられました。
ゼンショーグループは今後も、現地で見聞きした内容や継続的な情報収集を通じ、現地のニーズに合った支援を行ってまいります。
避難生活を行う住民の様子
家を追われ、未だ避難生活が続いている
洪水発生時は、色の変わっている場所
まで水位が上がった
洪水の水が引いた後干上がってしまった土地
農作物が育ちにくくなっている
被益者が見せてくれた配布食糧
2ヶ月経っても大切に使われていた
村の住民にヒアリングを行う様子
村の住民と交流を行いながら、
民芸品の帽子を被せてもらう様子
ジェトロ ビジネス短信に掲載されました
ゼンショーのパキスタン洪水被害支援、および現地訪問時の様子について、独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)のビジネス短信に掲載いただきました。記事はこちら
2023年5月 被災地を訪れて
甚大な被害を受けたパキスタンの報道があまりされていない、また、各国からの現地支援についても連携の難しさから実施が少ない状況にある中で、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という理念のもと、そういった地域への支援をすべきであると考え支援に至りました。
現地を訪問して感じたことは、想像よりも状況が酷く、まさに、その日暮らしで過ごしている方々が多くいるにもかかわらず、継続的な支援が実施されていないということです。そのような深刻な状況の中でも、我々が食糧を支援した被災者の方々から「本当に命がつながった」「米や小麦粉、油だけでなく嗜好品の紅茶まで用意してくださり感謝している」という言葉をいただいたことがとても印象に残っています。
今回の支援活動を実施いただいたジェン様には、洪水が発生している中、時にはボートに乗って一軒一軒被災地を訪問し、透明性の高いスクリーニングを実施いただきました。これにより本当に必要な世帯に対し食糧支援をすることができたと考えています。また、現地訪問の際は安全面などについてもご配慮いただき、非常に感謝しています。
今後も支援が必要とされている地域に足を運び、物資を必要とされている方々に直接届くような支援を続けることで、彼らの自立支援につなげていけるような活動をしてまいりたいと思います。
株式会社ゼンショーホールディングス 執行役員 長谷川 龍哉