トルコ・シリア地震支援
避難生活を行う人々にできたての食事を
甚大な被害を及ぼした地震
2023年2月6日、トルコ南東部を震源とするマグニチュード7を超える地震が発生しました。この地震により5万人以上が死亡したほか、被害は2,400万人以上に及んだといわれています。現地では古い建物を中心に多くの家屋が倒壊し、300万を超える人々が避難生活を余儀なくされました。
この災害に際し、ゼンショーは「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念のもと、被災者の生活の安定に寄与したいとの想いから緊急支援を決定。日常とは遠い状況にある人々の生活を少しでも支えるため、被災者に直接的な支援を行うことにしました。
募金と現地支援の決定
ゼンショーは、地震発生直後に緊急支援を決定し、グループの店舗で募金活動を実施しました。募金を活用した支援内容を協議する中で、ゼンショーがフェアトレード事業で連携している特定非営利活動法人パルシック(以下パルシック)が被災地で既に支援を始めているとの情報を入手しました。そこでゼンショーは、パルシックに募金の寄託を行い、被害の深刻な地域に住む人々への直接的な支援に活用いただくことに決めました。
また、地震発生から1ヵ月が経過した2023年3月、被災地では未だ支援活動が続いていたことから、ゼンショーはトルコに社員を派遣して支援を行うことを決定。パルシックと連携し、被災地の状況に基づきながら支援を実施することにしました。
トルコ被災地で支援内容を確定
トルコに派遣されたゼンショーの社員は、震源地に近いガジアンテップ県を拠点とし、まずは被災状況や支援内容の調査へ。パルシックの現地スタッフと共に、被害が深刻だったカフラマンマラシュ県、ハタイ県などの被災地や、そこで支援を行う団体を訪問し、どのような支援の実施が可能か、どのような支援が不足しているのかについてヒアリングを行いました。
支援団体への訪問を行う中で、ガジアンテップ県シャヒンベイ地区が運営する炊き出し機関「Şahinbey Belediyesi Aşevi」が、被害の深刻な地域の一つであるアディヤマン県で炊き出しを行っていることを把握。数日後に控えていたラマダン※の期間中、食事の調理・配布に人手を必要とすることも分かったため、ゼンショーの社員はこの炊き出し機関で食事の調理・配布を行うことにしました。
※ラマダン…イスラム暦の第9月のこと。この期間中、日の出から日没まで断食を行う。
建物の倒壊現場を視察する様子
(カフラマンマラシュ県)
倒壊の危険性のある建物が
取り壊される様子
犠牲者の親族や被災者など、
多くの人々が様子を見守っていた
(カフラマンマラシュ県)
地震により全壊した建物(ハタイ県)
アディヤマン県の避難所で炊き出し
ゼンショー社員が支援に携わった炊き出し機関「Şahinbey Belediyesi Aşevi」は、震災以降アディヤマン県にキッチンカーを派遣。被災者がテント生活を送る避難所で、1日あたり約5,000食の食事を提供していました。
避難所で食事の調理・盛り付けを行う炊き出し機関のスタッフは、ほとんどがイスラム教徒。ラマダンで食事をできない時間帯であっても、一生懸命に食事を準備するスタッフたちと一緒に、ゼンショーの社員も食事の盛り付け、包装を黙々と行いました。
炊き出しでは、ラマダンの際に日没後初めて口にする食事「イフタール」を提供。キッチンカーの前に列を作った人々に、世帯人数分の食事を配布しました。ラマダンは、家族や友人たちと集まり、日没後の食事を一緒に楽しむ時期でもあります。震災により例年とは異なるラマダンを迎える方々に、少しでも食事を楽しんでいただけるよう、ゼンショーの社員は教わったトルコ語で「召し上がれ」と伝えながら食事を手渡ししました。
食事の調理・配布が行われた
キッチンカー
食事の盛り付けを行う様子
パンを手渡しする様子
子どもの遊び道具が不足していたため、
塗り絵と色鉛筆を配布
現地支援 概要
期 間: | 2023年3月16日(木)~ 3月31日(金) |
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場 所: | トルコ アディヤマン県、ガジアンテップ県 シャヒンベイ地区ほか |
支援内容: |
行政の炊き出し機関「Şahinbey Belediyesi Aşevi」と共に食料の調理・配布を実施 ①アディヤマン県の避難所で1日あたり約5,000食の食料を調理・配布 ②ガジアンテップ県のセントラルキッチンで1日あたり約1,000食の食料を調理 など |
支援の届きづらい地域に日常食を
震災から5ヵ月が経った2023年7月、ゼンショーはパルシックを通じ、カフラマンマラシュ県の被災地で小麦粉の配布を行いました。
パルシックの現地スタッフは、県内の市街地から車で1時間以上かかる場所にある、北部の「ギョクスン」という地域を訪問。この地域には、市街地に近い地域では支給されている食料が届いていない状況でした。直近の物価高も重なり、住民が食費を十分に賄えていないことを聞いた現地スタッフは、食料の支援を決定。住民の声に基づき、毎日食するパンの原料となる小麦粉を配布することにしました。ゼンショーの支援金を活用して購入された小麦粉が、計241世帯に行き渡りました。
シリアで被災した人々の「食のインフラ」を支える
トルコ・シリア地震は、シリア北部にも大きな被害を及ぼしました。現地の人々の半数以上は、2011年から続く内戦により元の家を追われ、国内避難民キャンプで暮らす最中に被災しました。人道支援を必要とする人々は、人口の約9割を超えるともいわれています。
2023年4月から10月にかけ、ゼンショーはパルシックのパートナー団体を通じ、シリア北部における支援を実施。内戦の影響で支援が届きづらい地域においても被災者の「食のインフラ」を支えるべく、食に関わる3つの支援を行いました。
1. 食料バスケットの配布
国連の統計によれば、現地で暮らす約8割以上の人々が食を十分に賄えていないとされています。ゼンショーはパルシックのパートナー団体を通じ、国内避難民キャンプに住む1,700世帯に食料バスケットを配布。米やパスタ、食用油、レンズ豆など約1カ月分の日常食が、約8,500人に行き渡りました。
2. オリーブ農家支援
地中海性気候に属するシリアの沿岸部では、良質なオリーブが収穫されます。近年、世界では異常気象による収穫量の減少、原料高が発生しているため、需要の高まっているオリーブを生産すればするほど、農家は収入を増やすことができます。
パルシックのパートナー団体は、被災者の生計を支援するため、オリーブの収穫時期に合わせた支援を決定。生活するのに十分な収入を確保できていない女性や高齢者、障害を持った方など476名を雇い、476のオリーブ農家への派遣を行いました。収穫に人手を必要としていた農家のもとでオリーブの収穫作業に就いてもらうことで、生計手段の確保につなげました。
3. 給水施設の整備
内戦下のシリアでは、避難民の多くが安全な水にアクセスしづらい状況にあります。そのため、避難民キャンプなどの生活環境が整っていない場所でコレラが流行し、特に感染しやすい子どもたちの命が危険にさらされています。
コレラ感染拡大防止のため、現地では国連やNGOが給水施設の整備を進めていたものの、約3割の給水施設において整備が追いついていない状況でした。そのため、パルシックのパートナー団体は、16の給水施設の整備を決定。各取水施設に塩素消毒を行うことで、約19万人に安全な水が行き渡りました。整備を行った施設から水を得ていた女性からは、「子どもに申し訳ないと思いながらも、改善をすることは難しかった。水が安心して飲める状況を作ってくれて感謝している」という感謝の言葉をいただきました。
2023年3月 被災地を訪れて
2023年2月、トルコ南東部を震源とする、前例のない大きさの地震がありました。親日国としても知られるトルコに及んだ甚大な被害を知り、普段から災害支援を行っているゼンショーの一員として、他人事ではないと思いました。そこで、会社として何かできないかということで緊急支援のためのプロジェクトを結成しました。
支援内容について社内で協議を重ねる中で、地震に関する報道を見た社員から「募金だけではなく現地で直接支援をする事ができないか」という意見が挙がりました。「現地に行くことすらできないのではないか」「現地とのつながりが少ない中被災地を訪問しても、何もできないのではないか」など、様々な懸念の声もありましたが、最終的には「復興への想い」が勝り、現地支援の決定に至りました。
実際にトルコの被災地を訪れて感じたのは、報道で流れていた映像よりも深刻な被害状況です。震災から1ヵ月近くが経過していましたが、現地の生活は日常とは程遠く、復興まで時間がかかりそうだという印象を受けました。そのような状況の中でも、我々の配布した食事を受け取った現地の方々から「温かいご飯が食べられてよかった」「遠くからきてくれて感謝している」など、数多くの感謝の言葉をいただけたことが印象に残っています。私共のチームはこれらの言葉に励まされながら、「1人でも多くの方に喜んでいただきたい」という想いで、最大限の支援活動をさせていただきました。
これらの支援活動を実施できたのは、震災前から現地で活動を行っており、様々な支援ノウハウをお持ちだったパルシック様にお力添えをいただいたおかげです。フェアトレード事業からのつながりで、こうして世界の有事に対し一緒に活動できることを嬉しく感じるとともに、トルコ・シリアの両国においてニーズのある支援を模索してくださり、大変感謝しております。
今後も、現地で理解した実情や被災地の状況に基づき、現地の方々に必要な支援を届けていきたいと考えております。被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
株式会社すき家 代表取締役社長 笹川 直樹